トップページ > 妊娠の基礎知識 > 妊娠中のトラブル・心配ごと
妊娠すると、女性の体は徐々に、しかし確実に変化していきます。特にホルモンや自律神経のバランスが変わることで、体のあちこちに今まで感じたことがない不快感を覚えることもあるでしょう。「おなかの張り」を感じたり、急に「腰痛」や「むくみ」がひどくなったり、突然の「出血」や「尿漏れ」に驚いたり……。
赤ちゃんという新しい命がママの体に宿り、10ヵ月もの間その体内で育てていくのですから、こうした変化はむしろ自然なこと。心配は無用です。正しい知識を持って、ひとつひとつ適切に対処していきましょう。難しいことはありません。食べるものをちょっと工夫したり、無理のない範囲で体を動かしたりするだけで、不快症状はずいぶん改善されるものです。ゆったりと大らかな気持ちで、おなかの赤ちゃんと一緒に健康で快適なマタニティライフを過ごしましょう。
子宮が少しずつ膨らんでくると、下腹部に張りを感じます。また子宮が大きくなるに連れ、子宮を支えている円靭帯が引っ張られて足の付け根や下腹部に引きつれるような痛みを感じることがありますが、これらはごく自然な生理現象です。辛いときは無理をせず、おなかを圧迫しない姿勢で横になって休みましょう。下腹部を触ってみて固くなっている(子宮が収縮している可能性がある)場合や、痛みがあまりにも強い、頻繁に起こる、長時間続く、出血があるなどの場合は医師の診察を受けましょう。
妊娠中の出血で最も多いのは、膣内のうっ血や膣壁の充血、膣部のただれによる少量の出血です。しかし場合によっては、流産や早産を知らせるものかもしれません。痛みをともなう場合や出血が続く場合はもちろん、たとえ少量の出血でも、この程度なら大丈夫と自分で判断せず早めに医師の診断を受けることをおすすめします。原因がわかり、適切な対処ができれば安心です。
貧血とは、血液中の赤血球やヘモグロビンが不足して全身に十分な酸素が行き渡らず、身体のさまざまな機能が低下することです。酸素不足を補おうと心臓や肺が余計に働こうとしますから、めまいや動悸も起こります。赤血球やヘモグロビンの原料となる鉄分やたんぱく質をたくさん摂取しましょう。特に妊娠中は、おなかの赤ちゃんに酸素を運ぶため血液のかさが増し、それだけ多くの赤血球を必要とします。また赤ちゃんは自分の体をつくるため、ママの体から積極的に鉄分や赤血球を吸い上げます。レバーや赤身の肉、いわしやサバなどのいわゆる青魚類、貝類、ほうれん草などの緑黄色野菜を意識的に多く摂るようにしましょう。
子宮が大きくなると直腸を圧迫するため、妊婦は便秘になりやすいものです。直腸や肛門周囲の静脈のうっ血が痔を引き起こすこともあります。さらにホルモンの分泌が腸の機能を低下させたり、運動不足が重なって便通が悪くなりこともあります。ちょっとした生活の工夫で便秘の不快感を解消しましょう。朝コップ1杯の水を飲んで腸を刺激すること、ごぼうやセロリといった繊維質の多い食物、フルーツなど水分の多い食物を積極的に摂ること、散歩やマタニティヨーガなどで適度に体を動かして腸の動きを助けてやること、十分な睡眠を心がけて生活にリズムをつくり排便を習慣づけることが大切です。
妊娠中はどうしても重心が体の前方へと移るため、バランスをとろうと背を反るような姿勢になり、背骨を支える筋肉を緊張させ痛みを引き起こします。また妊娠中期以降、赤ちゃんがだんだん骨盤の中へと下りてくると、骨盤や背骨に子宮の重みがかかり腰痛の原因となります。赤ちゃんが出てきやすいように骨盤がゆるむ時期にはなおさら重みがこたえますが、自然なことですので心配はいりません。おなかを圧迫しないように十分注意して、マタニティヨーガやストレッチで腰の周りの筋肉をほぐし、痛みを和らげましょう。腹帯やガードルで補助してもいいでしょう。
寝ているとき、急にふくらはぎや足の付け根がつることがあります。一般的にはビタミンB1やカルシウムの不足、過労などで神経と筋肉が異常に興奮することが原因だと言われていますが、妊娠中のママ特有の原因も考えられます。妊娠中後期、子宮が大きくなって足の付け根を圧迫するようになると、下半身全体が血行不良になり足がつりやすくなるのです。足がつってしまったら、足の指を手前に反らして血行を促進します。足を高くして横になるのも効果的。栄養バランスのとれた食事を心がけることも大切です。
妊娠中でなくても、長時間の立ち仕事やデスクワークなどで足がむくんだ経験を持つ人は多いでしょう。本来心臓に戻るべき静脈の血液の流れが筋力の低下などで停滞し、血液中の水分が徐々に血管からしみ出てしまう…これがむくみの正体です。妊娠中は、大きくなった子宮が骨盤内の静脈を直接圧迫したり、足の付け根を圧迫したりと血行不良を起こしやすくなります。ひどい場合は静脈瘤(血管がボコッとコブのように浮き出た状態)ができることもありますから注意してください。足首を強く手前に反らしてふくらはぎの筋肉を動かしたり、大きく伸びをして体幹部の血行を促進し、むくみを事前に防ぎましょう。
妊娠後期になると赤ちゃんの頭が膀胱を押すような形になり、また赤ちゃん自身や羊水、胎盤など大変な重さが膀胱を圧迫するため、頻繁に尿意を覚えるようになります。我慢せず、こまめにトイレに行きましょう。尿意を我慢すると膀胱炎や腎盂炎などの病気を引き起こす危険がありますので注意してください。また、妊娠によりホルモンバランスが変わると尿道周囲の筋力がゆるみ、思わぬ尿漏れを起こすこともあります。通常は一時的なものですので安心してください。生理用ナプキンや専用のパッドを利用するといいでしょう。
妊娠は思っている以上にママの体を疲れさせるもの。風邪をひきやすい状態と言えます。普段以上にバランスよい食事とたっぷりの睡眠をとり、人混みを避ける、外出後の手洗い・うがいを徹底する、加湿器などで室内の乾燥を防ぐといった予防を心がけましょう。
万一風邪をひいてしまったら、市販の風邪薬は飲まずに医師の診断を受けましょう。気管支炎や肺炎といった風邪とよく似た症状の病気である可能性も考えられます。自己判断せず、早めに医師に相談することが大切です。
流産で最も多いのは、妊娠22週未満の妊娠早期に赤ちゃんが子宮の中で育たず妊娠が中断してしまう「早期流産」です。全妊娠の13%ほどで早期流産が起こると言われていますが、原因の多くは受精卵そのものの染色体異常や未発達で、ママに原因があるわけではありません。流産してしまったら、母体の安全と次の妊娠のためにできるだけ早く医師の適切な処置を受けましょう。くよくよせず前向きに気持ちを切り替え、次の妊娠へと心とからだを整えることが大切です。
流産はしていないが痛みや出血があり流産が切迫している、という状態を「切迫流産」と呼びます。早めに医師の診断を受け、超音波検査(エコー)で赤ちゃんの無事が確認できたら、医師の指示に従って安静を心がけましょう。重いものを持ったり動き回ったりは厳禁です。痛みや出血が治まれば、以降の妊娠の経過や赤ちゃんにはほとんど影響がないと言われています。そのままおなかの中で赤ちゃんを育てていくことができますので安心してください。
妊娠すると腎臓や血管の働きに変化が起こりますが、これにママの体がうまく適応できないと妊娠中毒症(現在は「高血圧症候群」と呼ばれます)になると考えられています。
むくみ、高血圧、たんぱく尿が三大症状ですが、ときには昏睡、呼吸困難などを引き起こし最悪の場合は死に至ります。
症状のうち、むくみは自覚できますから、特に妊娠後期にはむくみに注意してください。
スネなどを押しても元に戻らない、手の指が腫れぼったい、1日中顔やまぶたが腫れるといったひどいむくみを感じるときは、ただちに医師の診察を受けることをおすすめします。
その他、高血圧(妊娠中は赤ちゃんに栄養を関係上、血圧が少し高めになりますが、上が140mmHg以上、下が90mmHg以上になると高血圧と診断されます。(日本産婦人科学会の発表))や、健康ならほとんど出ない尿タンパクが検出されるのも、サインのひとつ。
妊娠中毒症のときには腎臓(体内の老廃物をろ過して尿にする臓器)の機能が低下してタンパクが漏れやすくなります。
試験紙を用いた検査で15mg/dl以下(−)、15〜30mg/dl(±)で陰性、30mg/dl以上(+)出ていると陽性となります。
以下の人は、妊娠高血圧症候群になりやすい傾向にあります。
十分に注意してください。
・多胎妊娠の人
母体への負担が大きいため、臓器に負担をかけやすく、その他の病気も引き起こしやすくなります。
・初産婦や、過去に妊娠中毒症だった人
過去に妊娠中毒症だった人は繰り返す傾向があります。また、経産婦より初産婦のほうに多く見られますので注意が必要です。
・ハードな仕事やストレス、睡眠不足がある人
フィジカルな疲労やストレスは自律神経に影響します。
また、腎臓機能が低下して尿タンパクが出たり、血圧が上がることがあります。
夜はできるだけ「その日のうちに」休むようにしましょう。
・35才以上の高年初産と15才以下の若年出産
高年初産の場合は妊娠糖尿病などの病気を併発しやすい傾向があります。
また若年出産の場合も統計的になりやすい報告があります。
・糖尿病、高血圧、腎臓病の人
これらの疾患を持っている人、または以前かかったことがある人。
家族がこれらの病気を持っている場合も、体質的に妊娠中毒症になる可能性があります。
・太りすぎ、痩せすぎの人
特に太りすぎの人は注意が必要です。太りすぎは心臓を圧迫し血圧を上昇させます。また痩せ過ぎの人も疲労やストレスをため込む傾向があります。
おなかの赤ちゃんは妊娠30週ごろまで羊水の中を自由に動き回ります。30週を過ぎたころから頭を下にした状態(頭位)で落ち着きますが、なかには頭を上にしたまま落ち着いてしまう赤ちゃんもいます。これが逆子(骨盤位)です。ほとんどは妊娠の経過とともに自然に治りますが、出産に至っても逆子の場合は帝王切開になることがあります。いちばん大きな頭が最後に出てくるわけですから出産に時間がかかり、赤ちゃんに酸素が届けられないなどの危険があるからです。鍼灸や体操で逆子が治るとも言われています。
妊娠22週以降、37週未満の出産を早産と呼びます。妊娠中毒症や逆子、子宮頸管無力症(頸管が弱いために痛みなどの自覚症状がないまま子宮口が広がってしまう病気)が原因となることもありますが、多いのはごく早期の破水(前期破水)による早産で、早産全体の約40%を占めます。原因はさまざま考えられますが、過度のストレスや過激な運動などママの生活に原因があることが多いようです。ママと赤ちゃんの状態により、未熟児出産、抗生物質の投与などでなるべく出産を延ばすなど対処は異なります。